「戦争を知らない」世代に生まれた僕の「戦争体験」

もう九十歳近くになる僕のおばあちゃんは、正月やお盆で一緒に食事をする時などに、よく自分の半生について皆に語ってくれます。

関東大震災の時、家族と共に命からがら逃げ出してきたこと、若かった頃、ずっと戦争ばかりで自分には青春と呼べるような思い出は無いということ、終戦後、銀行員だったおじいちゃんと結婚したこと。

いつも沢山話してくれるおばあちゃんですが、おばあちゃんの口から必ずと言っていいほどいつも出てくる言葉があります。

「戦争なんていいこと一つもない」

 僕は、おばあちゃんのこの言葉を聞くたびに、いつもずしりと心に重たいものを感じます。

戦地には行っていないけれど、戦争を肌身で感じたおばあちゃんのその一言は、僕に「戦争は二度とやってはいけない」ということを痛烈に教えてくれました。

「戦争を知らない世代」の僕が、「戦争」というものを特に強く意識した経験はもう一つあります。
それは、僕が小学校二、三年生くらいの頃に、「アンネの日記」という本を読んだことです。
この本は読んだことがある方も多いと思いますが、当時せいぜい七、八歳に過ぎなかった僕にとって、この経験はとても衝撃的なものでした。

とにかく悲しくて、かわいそうで、仕方がなかった。その時一緒にいた兄弟達によると、僕は図書館からの帰り道でもずっと泣いていたそうです。

 僕は今、もう戦争によって人々が殺し合い、奪い合い、泣き叫ぶ、そんな景色を見たくない、と本気で思います。

大人数で身を寄せ合っていた小さな隠し部屋で、一生懸命生きていたアンネ。そして、きっと彼女以外にも、世界中で、無数の無名のものたちが、戦争というものによって失われてきた。

僕は、彼らの心の叫びを、メッセージを決して忘れないし、この「戦争」というものを永遠に地上から廃絶したい、いやそうする責務を持っているのだと強く感じています。

アンネの日記 (文春文庫)

アンネの日記 (文春文庫)